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判例「トランスジェンダーのトイレ利用制限は適法」

    
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判例「トランスジェンダーのトイレ利用制限は適法」

一審判決を覆し職員側が敗訴 経産省の処遇は不合理と言えず

通商産業省 (当時)に男性として採用されたトランスジェンダーの50代職員Aが、カミングアウト後も数年にわたって女性トイレの使用が制限されていることを不服として、国家賠償法に基づく損害賠償等を請求しました。

東京高裁はAにも十分に配慮したトイレ使用制限の措置であり、その処遇は不合理とは言えないとしました。【経産省事件 東京高等裁判所(令2・5・27判決)】

トイレの使用制限を設けた経緯

平成11年頃に性同一性障害の診断を受けたAは、平成21年に同障害について上司にカミングアウトし、翌年には所属部署においてAの性同一性障害に関する説明会が開催されました。それ以降、Aは女性の身なりで勤務し、経産省の指示どおり女性トイレの使用に際しては執務室のある階から上下2階以上離れたトイレを使用してきましたが、トイレの使用制限については人事院等に対して撤廃を求めてきました。

ハラスメント発言をされたことも

その間、経産省担当者か らは「なかなか手術を受けないんだったら、もう男に戻ったらどうか」といったハラスメント発言なども受け、抑うつ状態となり1年以上休職したこともありました。

一部の女性職員には違和感のある様子が

経産省が女性トイレの使用制限を設けたのは、所属部署内での説明会の折、参加した女性職員がAの女性トイレ使用について違和感のある様子が見受けられたためとしています。

なお、Aは健康上の理由から性別適合手術は受けておらず、家庭裁判所で性別取扱い変更の審判は受けていないことから、戸籍上は男性のままです 。名前については家庭裁判所の許可を得て女性名に変更しています。

地裁判決「真に自認する性別に即した社会生活を送ることは重要な法的利益」

一審の地裁判決では、「個人がその真に自認する性別に即した社会生活を送ることができることは、重要な法的利益として、国家賠償法上も保護されるものというべき」であるとして、女性トイレの使用制限の継続はこの法的利益を制約するもので庁舎管理権の行使に当たって尽くすべき注意義務を怠ったものとされました。

また、経産省担当者によるAの性自認を否定するような発言についても、国家賠償法上違法と判断し、損害賠償請求を一部認容しました。

控訴審判決「積極的に対応策を検討した」

控訴審判決では、一審同様、Aが性自認に基づいた性別で社会生活を送ることは、法律上保護された利益であるとしました。

しかし、「他の職員が持つ性的羞恥心や性的不安などの法的利益も併せて考慮し、原告を含む全職員にとっての適切な職場環境を構築する責任を負っていることも否定しがたい」として、女性トイレの使用制限はその責任を果たすためのものとしました。

「トイレ使用制限の処遇は不合理と言えず」

また、先進的な取り組みがしやすい民間企業とは事情が異なり、「性別取扱いの変更の「審判」を受けていないトランスジェンダーの性自認について、規範や先例がないなかで経産省は積極的に対応策を検討したとして、トイレ使用制限の処遇は不合理と言えず、適法としました。ただし、先述した担当者の発言には一審同様、違法性を認めました。

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