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判例〜継続雇用制度の人事考課基準を裁判所が解釈示す〜

    
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判例〜継続雇用制度の人事考課基準を裁判所が解釈示す〜

60歳定年で退職し、再雇用(雇用期間1年の有期雇用)された従業員が、一年後、定年後再雇用の条件を定めている労使協定所定の要件を充足しないとして契約更新を拒否されたことを不服とし、会社に対し再雇用契約上の地位確認と未払い賃金、未払業績賞与等の支払いを求めて提訴した事案です。

東京地裁は当該従業員の請求を概ね認めました。

E社事件 東京地方裁判所(平30.6・12判決) 

「普通の水準」をめぐって契約更新されず

最も大きな争点は、定年後再雇用社員の雇止めの有効性です。同社は、平成24年の高年法改正前に継続雇用制度の対象者を限定するための要件を定めた労使協定を締結していました。

この対象者基準には、人事考課基準として「過去3年間の人事考課結果が普通の水準以上であること」と定められています。

会社は過去3年間のいずれの年においても、全従業員の平均点以上か、少なくとも評価点数3点以上であることを意味するとし、当該従業員にあってはこの要件が充足されていないことから契約更新を拒否したと主張しました。

これに対し、当該従業員は会社の評価は不当であり、実際には基準を充足しており、労働契約法19条2号(契約更新の合理的期待)により、同一の労働条件で契約が更新されたとみなされることなどを主張しました。 

継続雇用制度を踏まえた人事考課基準

東京地裁は「本件労使協定に基づく再雇用制度は、高年法上の高齢者雇用確保措置の1 つである継続雇用制度として設けられたものであることを踏まえると、本件人事考課基準のいう『普通の水準』は、大半の従業員が達成し得る平凡な成績を広く含む趣旨と解すべきであるし、『過去3年間の人事考課結果が普通の水準以上であること』というのは、過去3年間を通じて評価した場合に「普通の水準」以上であれば足りるという趣旨と理解するのが合理的である」としました。

また、労使協定が締結された当時、社内において平均点以上ないし3点以上が必要である旨の説明がなされたことを窺わせる形跡もないとし、新たに当該従業員の上司となった者によって人事考課基準の解釈が定められたと認定しています。

そのうえで、当該従業員は「本件人事考課基準を含む本件再雇用基準に含まれる全ての要素を充足していたから、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められないものといえ、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で本件再雇用契約が更新されたものと認められる」と判示しています。

労使協定締結のポイント

このように、様々な解釈が可能な労使協定の文言について、その趣旨や背景などを考慮して裁判所がその解釈を下している点が注目されます。

今回のケースでは、当該規定が定められた経緯に関する資料等もなく、新たな上司が解釈を定めたと裁判所が認定していることを考えると、人事制度の趣旨、運用状況、従業員への周知状況といった記録を適切に保管しておくことも大切といえそうです。

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