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修学資金返済を求めた提訴を棄却。その内容とは?

    
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修学資金返済を求めた提訴を棄却。その内容とは?

医療法人Kが、雇用していた看護師に対し、看護学校等在学中に貸し付けた修学資金(約239万円)について返還を求めました。学校卒業後、医療法人Kで6年間勤務することで貸付金の返還が免除されることになっていましたが、当該看護師が約4年5カ月で退職したことからその全額返還を求めて提訴したものです。医療法人K会事件  (平成29・9.6判決) 

第一審の山口地裁はKの請求を棄却、Kは広島高裁に控訴しました。裁判所の判決内容についてみていきます。

修学資金貸付けは労基法16条違反?

裁判所は、請求を棄却し、労基法16条違反として貸付金について無効を判断しました。

会社が従業員に技能習得や資格取得の際に、その費用を貸与し一定期間勤務した場合にその返還を免除するという内容は、習得・取得後すぐに退職の流れになることを避ける為の手段として珍しくないでしょう。

その内容は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」とする労基法16条(損害賠償額の予定の禁止)に抵触しないかどうかが問題となります。同条の法意は、違約金や損害賠償額を予定することで、労働者の退職の自由を制限する足止めや強制労働を禁止することにあるとされています。

今回の場合も、労働者の退職の自由を制限するような実態がなければ同条違反は否定されるということになりますが、広島高裁は労基法16条違反を認定しました。

判断材料としては「文理上、労働契約そのものに限定されていない。また労働者の生活保護という労基法の趣旨に照らせば、適用契約を限定する理由がない」としました。貸付契約は労働契約ではないので適用されないというKの主張に対して否定し、本件貸付を無効としたのです。

労基法13条、14条にも抵触?~有期上限の3年超の範囲は無効~

今回の判断に際して、労基法16条違反として無効となる本件貸付の範囲(6年間勤務すると定め)について、本件貸付は労働契約の一部を構成するため「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となった部分は、この法律で定める基準による」とする労基法13条によって、本件貸付は同条(13条)に適合する内容に置き換えて判断材料としました。

また、今回の判決が、労基法14条(契約期間等)を基準にしているところも特徴となります。労基法14条 (契約期間等)の規定で契約期間の上限を定めているのは、労働者の退職の自由のためであり、その法意は労基法16条と一致するとしています。

労基法14条では「労働契約は期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは3年(一部は5年)を超える期間について締結してはならない」とされています。

「退職の自由を不当に制限する」基準として、その無効となる範囲(6年間勤務するとの定め)は有期契約の上限とされる3年(一部 5年)を超える部分と判示しました。 

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