実務相談〜退職後の傷病手当金受給の可否と、その他の社会保険からの給付は?〜
「退職後の傷病手当金受給の可否と、その他の社会保険からの給付は?」
現在、私傷病で長期入院している従業員(正社員)がいます。先日、休職期間満了となった場合、就業規則の定めのとおり退職扱いになることを説明してきました。退職の取扱いについては本人も承知していましたが、退職後のことで相談がありました。現在、受給している傷病手当金がどうなるかということと、他に受給できる社会保険からの給付はないか、というものでした。ご教示願います。
条件を満たしていれば継続受給できる
傷病手当金は、健康保険に加入する被保険者が病気やケガなど私傷病で働けなくなり、給与の支払いを受けられない場合に受給できるもので、支給期間は最長1年6ヵ月となっています。
ご質問は、この支給期間内に退職した場合、 引き続き傷病手当金が受給できるかということですが、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていれば、継続して受給することができます (退職日に出勤した場合、継続給付を受ける条件を満たさないため、退職日の翌日以降の傷病手当金は受給できなくなりますので注意が必要です)。
健康回復後は社会保険からの受給が可能なケースも
退職後のその他の社会保険からの給付では、傷病手当金の支給期間終了後に当該疾病によって障害が残り、その程度が所定の障害等級に該当する場合には、障害厚生年金の受給申請をすることが考えられます。
また、雇用保険の被保険者期間については不明ですが、受給要件を満たしているのであれば、働ける状態に健康が回復した場合、ハローワークで求職の申込みをし、求職者給付(基本手当)を受給することが考えられます。
万が一、求職の申込み後に、疾病等が再発して15日以上続けて求職活動ができないときには、基本手当に代えて傷病手当が支給されます。
まずは退職後、30日以上傷病等ですぐに職業に就くことができない状態であれば、ハローワークに雇用保険の受給期間延長(最長4年まで)を申出て、健康の回復に努めることが肝要と考えます。
社労用語じてん「休業手当」
休業手当について、労基法26条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」と定めています。
「使用者の責に帰すべき事由」とは、会社の都合で従業員が就業できなくなったことを指し、企業側の故意・過失による休業はもとより、経営・管理上の障害によるものも含まれます。
新型コロナウイルス感染症では、感染した従業員を休業させる場合は使用者の責には当たりませんが、感染が疑われる従業員を会社側が自主的な判断で休業させた場合には、休業手当の支給が必要となります。