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判例「バス運転士らの職種限定合意を否定」

    
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判例「バス運転士らの職種限定合意を否定」

バス事業再編に伴って子会社に在籍出向させていたバス運転士らに復職を命じ、清掃業務等に従事させたことが、配転命令権の濫用に当たるか否かが争われた事件です。運転手らは職種限定特約があったとして、復職後の清掃業務等への従事は労働協約、個別労働契約違反であると主張しましたが、横浜地裁は、職種限定の合意は認められないとして運転手らの請求を斥けました。             【Sホールディングス事件 横浜地方裁判所(平成30・4・19判決)】

子会社に在籍出向していたバス運転士らへの復職

専らバス運転士として勤務してきた従業員Xらは、バス事業再編の過程で、平成22年にXらの労働契約を承継した持株会社(親会社)の従業員となったものの、引き続き子会社Bに在籍出向してバス運転士等の業務に従事してきました。その後、親会社が平成26年にXらが加盟する労働組合に対して、出向補てん費が負担になっているとして、①Xらの子会社への移籍、②特別退職の拡張適用、③親会社への復職(無回答は③とみなす)、のいずれかの選択を求めましたが、Xらの真意は在籍出向の継続であったことからこれを拒否しました。そのため、親会社は平成28年4月以降、順次、Xらに復職命令を発し、当面の業務として親会社の関連施設の清掃等の業務に就かせました。

こうした措置に対し、Xらは、復職命令は労働協約、個別労働契約に違反し、権利濫用に当たり、無効であるなどと主張して、バス運転・車両整備業務以外の業務に勤務する義務がない労働契約上の地位確認と損害賠償などを求めて提訴しました。

就業規則に配転条項 他職種への異動実績あり

主な争点は、親会社への復職命令が、労働協約、個別労働契約(職種限定特約)の違反に当たるかどうかです。Xらは、バス運転士として採用され、採用に当たって大型二種免許が必要であったことや、入社(旧会社)以来、バス運転士として勤務し、Xらの初任給はバス運転士として他の労働者とは別に職級が格付けされていたことなどを、職種限定特約の裏付け事実として主張しました。

これに対し、横浜地裁は、大型二種免許の保有を採用条件とすることと、採用後の配転とは別問題であり、初任給については、大型二種免許取得には21歳以上が要件となることが考慮された可能性が否定できないとしました。また、就業規則には業務上の必要に応じて配置転換を命ずることがあると規定されており、実際にバス運転士から他の職種に異動した実績もあることから、労働者の個別の同意がなくとも、業務上の必要がある場合には、職種変更を命じる権限を親会社は有するとしました。

また、Xらは、バス運転士から他の職種への異動は、運転業務の継続が困難になった場合などに限定される労使慣行があり、労働契約の内容になっていたとも主張しました。しかし、横浜地裁は、労使慣行の成立には、慣行的事実の継続だけでなく、当該労働条件の決定権限者がその規範性を認めていたことが必要であり、そうした確たる証拠は認められないとしました。

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