コロナ流行後の働き方への意識にギャップ〜人材育成・能力開発への影響に関する調査結果〜
(独)労働政策研究・研修機構が「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」 結果を公表しました。
労働環境が大きく変化するなか、企業による従業員の能力開発や労働者自身によるキャリア形成の現状・課題について調査しており、ここでは新型コロナウイルス感染拡大による人材育成・能力開発への影響に関する調査結果をみていきます。
“個人重視”の働き方へと変化する企業
新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いた後の従業員の「仕事のやり方」や「働き方」の変化の有無について、27.7%の企業が「変化する」と回答。企業規模が大きい会社ほど「変化する」と回答しており、「300人以上」では57.6%と6割近くに上っています。
「変化する」と回答した企業に対して、今後、どのような人材をより重視するかを訊いたところ、「生産性や効率性に対する意識が高い人材」(49.3%)が最も多く、約半数を占めています。
次いで 「環境の変化に対応できるタフな人材」(48.6%)、「自己啓発を行うなど自ら能力を伸ばすことに積極的」(42.1%)などの順となっています。
また、「変化する」と回答した企業に対して、人材育成・能力開発への影響を訊いたところ、「個人の仕事の範囲や役割がより明確になる」(33.8%)が最も高く、次いで「リモートワークを活用した研修が増える」(27.4%)、「より自己啓発を重視する」(22.6%)、「より個人にあった内容の研修や教育が増える」(22.1%) などの順となっています。
従業員も働き方への変化を実感
一方、従業員(正社員)を対象に、新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いた後の「仕事のやり方」や「働き方」の変化の有無について訊いたところ、「あると思う」が全体の46.6%を占めています。
また、変化が「あると思う」とした人に対し、どのようなことが会社から求められると思うかを訊いたところ、「より生産性や効率性を意識する」(37.3%)が最も高く、次いで「デジタル技術やデジタルツールにより詳しくなる」(35.7%)、「環境の変化に対応できるタフさを求められる」(32.1%)などとなっており、「自己啓発を行うなど自ら能力を伸ばすことに積極的になる」は13.8%に留まっています。
企業側と従業員の意識にギャップ
今回の調査からは、能力開発に関して自己啓発など個人重視にシフトしていくとする企業側と、従業員の意識とでギャップがみられる結果になっています。
しかし、厚労省の「能力開発基本調査」によれば、新型コロナ問題以前から、人材育成に関して約7割の事業所が「問題がある」と回答し、その理由として「指導する人材が不足している」「人材育成を行う時間がない」などを挙げていることを考え合わせると、このコロナ禍によって企業の能力開発における個人重視の姿勢が一層強まったとみるべきかもしれません。
企業競争力の源泉は人材ですから、今一度、コロナ禍を契機に自己啓発も含めた人材育成・能力開発の在り方について再検討する必要があるのではないでしょうか。