実務相談〜管理職の労働時間管理はどこまで厳格に行う必要がありますか?〜
先般、同業者の集まりで、労基署から賃金未払残業に関して是正勧告を受けた会社のことが話題になりました。そこで、当社でも社員の労働時間管理の厳格化を進めようと考えています。
ただ、管理職については残業代が発生しないことから、特段、労働時間を厳格に管理する必要はないのではないかという話が出ています。
管理職に関してはそのような取扱いで問題ないでしょうか。
「労働時間の適正把握ガイドライン」を参考に
従業員の労働時間管理は使用者の責務であり、その具体的な管理の方法としては厚労省の「労働時間の適正把握ガイドライン」(平29.1.20基発0120第3号)が参考になるでしょう。
ガイドラインには、労働時間の適正把握のための原則的な方法や、やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合の留意点のほか、各労働者の労働日数、労働時間数、時間外・休日労働時間数、深夜労働時間数などの事項を適正に賃金台帳に記入することなどが明記されています。
管理監督者の場合は「深夜労働」の時間管理に注意
しかし、御社の管理者が労基法41条に定める管理監督者等である場合、このガイドラインの対象外となります。
こうした取扱いも、一般従業員と違って管理監督者にあっては労働時間管理が不要であるかのように思わせる一因になっているのかもしれません。
確かに管理監督者の場合、労働時間等の規制につい ては適用除外となりますが、深夜業の規定に関しては適用除外でないことに注意する必要があります。
このため、実務上の取扱いとしては、労基則54条5項において管理監督者に関しては賃金台帳に深夜労働時間数を記入する必要はないと規定しているにもかかわらず、「労基則54条1項6号の「深夜労働時間数」は賃金台帳に記入するように指導されたい」(昭23・2・3基発161号)という行政解釈が示されており、管理職の勤務が深夜時間帯(午後10時から翌日午前5時まで)に及ぶ場合には、その労働時間管理が必要となります。
管理職も一般従業員同様の管理が必要
また、2019年4月からは労基法上の規定とは別に、「働き方改革推進法」において労働安全衛生法が改正され、健康管理の観点から管理職を含む従業員の労働時間等の把握義務が課されるようになっています(法66条の8の3)。
同法では、長時間労働による労働者の心身の健康障害を未然に防止するため、①休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合のその超えた時間(時間外・休日労働時間)が1カ月当たり80時間を超え、②労働者が申し出ている場合には、医師による面接指導を実施することを事業者に義務付けています。
このため、事業者は適正に面接指導を実施するため、上記のガイドラインにあるように、原則としてタイムカードやICカードなど客観的な方法で労働時間の状況を把握する必要があります。
ですから、管理職についても他の従業員と同様にしっかりとした労働時間管理を行わなければなりません。