データバンク ~令和2年度 個別労働紛争解決制度の施行状況~
厚労省から「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。
個々の労働者と事業主との労働条件や職場環境などをめぐるトラブルの未然防止、早期解決を目的としたこの制度には、「総合労働相談」、都道府県労働局長による「助言・指導」、そして紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があり、それぞれの施行状況をまとめています。
「いじめ・嫌がらせ」最多 「解雇」等が増加傾向
都道府県労働局や労基署内など全国379か所に設置された「総合労働相談コーナー」への相談件数は129万782件(前年度比8.6%増)と、13年連続して100万件を超えています。
その内訳は「法制度の問い合わせ」 が87万 5,468件 (13.7%増)、「労基法等の違反の疑いがあるもの」が19万961件 (2.7%減)、「民事上の個別労働紛争相談件数」は27万8,778 件(0.2%減)などとなっています。
「解雇」「労働条件の引き下げ」「退職勧奨」などは近年増加
このうち「民事上の個別労働紛争相談件数」(延べ34万7,546件)の内訳をみると、いじめ・嫌がらせ (7万9,190件)、自己都合退職 (3万9,498件)、解雇 (3万7,826 件)、労働条件の引き下げ (3万 2,301件)、退職勧奨 (2万5,560 件)などが多くなっています。
「解雇」「労働条件の引き下げ」「退職勧奨」などは長期的には低下傾向にありましたが、平成30年度以降、増加に転じてきています。
都道府県労働局長による助言・指導に移行した件数は減少
次に、「民事上の個別労働紛争相談」から都道府県労働局長による助言・指導に移行した申出件数は、9,130件と平成28年度以降、増加傾向にあったものの令和2年度は低下しています。
申出内容別の延べ件数 (9,942件)の内訳をみると、やはり、いじめ・嫌がらせ (1,831件)が最も多く、次いで、解雇 (962件)、労働条件の引き下げ (897件)、自己都合退職 (736件)、退職勧奨 (633件) などの順となっています。その処理状況をみると、終了件数は9,057件の内、99.2%に当たる8,981件が1ヵ月以内に行われており、8,741件について助言・指導が実施されています。
紛争調整委員会によるあっせんに移行した件数は減
最後に、「民事上の個別労働紛争相談」から紛争調整委員会によるあっせんに移行した申請件数は 4,255件と、昨年度よりも21.9%減となっています。
申請内容別の延べ件数 (4,510件)の内訳をみると、多いものから順に、いじめ・嫌がらせ (1,261件)、解雇 (983 件)、雇止め (427件)、 労働条件の引き下げ (313件)、退職勧奨 (299件) となっています 。
処理状況を見ると、終了件数4,289件のうち紛争当事者の双方が参加してあっせんが開催されたのが2,074件(48.4%)で、さらに合意が成立したのは1,330件(合意64.1%)となっています。
「いじめ・嫌がらせ」の件数が突出
以上のように「民事上の個別労働紛争の相談」「助言・指導の申出」「あっせんの申請」のいずれにおいても「いじめ・嫌がらせ」の件数が突出しています。
「いじめ・嫌がらせ」による職場環境の悪化は、従業員の心身の健康を損なうとともに、会社全体の生産性低下を招く重大な経営リスクでもあり、その解消に向けた取組みを一層、強化していく必要があると言えます。