「働き方改革」派遣労働者の同一労働同一賃金~労使協定方式による待遇決定~
派遣労働者の待遇決定の方式には、「派遣先均等・均衡方式」のほかに「労使協定方式」があります。 実際の派遣会社の「同一労働同一賃金」への対応では、派遣先の変更があっても待遇を変える必要がなく、また、派遣労働者との協議で導入できる「労使協定方式」が大半を占めているとされています。
賃金は「一般賃金」以上 協定不遵守は原則的方式に
今回は、労使協定方式による待遇決定の概要についてみていくことにします。
なぜ待遇決定の方式に二通りあるか
まず、何故、派遣労働者の待遇決定の方式に二通りあるかという点についてです。 派遣労働者の比較対象となるのは、派遣先の通常の労働者であり、当該通常の労働者との均等均衡待遇の確保が原則となります (派遣法30条の3)。しかし、派遣労働者の場合、この原則を適用することによる不都合が生じることがあります。
派遣先が変わるごとに賃金が変わらないように
例えば、同じように働いたとしても、派遣先が変わるごとに賃金水準が変更されてしまい、収入が安定しなくなるといったことが起こります。
その他にも、同じ仕事内容で働くのであれば、比較的賃金水準の高い大企業への派遣希望が集中したりするといったことも起こりかちになります。このため、派遣先均等・均衡方式に加え、労使協定方式も選択可能にしているわけです。
なお、同じ派遣会社において、派遣労働者ごとに派遣先均等・均衡方式あるいは労使協定方式を適用するようにすることも可能です。
協定を締結する労使協定方式
労使協定方式では、派遣会社が労働者の過半数で組織される労働組合 (ない場合は過半数代表者)と一定の要件を満たす協定を締結する必要があります (派遣法30条の4第1項、派遣則25条の8から25条)。
公正に評価する必要がある
労使協定で定める賃金(基本給、手当、賞与、退職金)に関する待遇では、
①派遣労働者が従事する業務と「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額」(一般賃金)と同等以上の賃金額であること
②派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験等の向上があった場合に通勤手当等を除く職務に密接に関連する賃金が改善されること
のいずれも満たし、公正に評価する必要があります。
不合理な相違がないこと
賃金以外の待遇では、派遣会社の通常の労働者(派遣労働者は除く) との間での均等・均衡待遇を確保しなければならず、不合理な相違がないことを定める必要があります。具体的には、慶弔休暇といった法定外の休暇や、病気休職などの福利厚生がこれに当たります。
労使協定から除かれる部分
ただし、派遣法が定める教育訓練 (法40条2項)、 福利厚生施設 (法40条3項) については、派遣先均等・均衡方式と同じように、派遣先の労働者との均等・均衡待遇を図る必要があるため、労使協定の事項から除かれています 。
このため、派遣先は当該教育訓練、 福利厚生施設については情報を提供する必要があります。
労使協定を遵守していない場合は派遣先均等・均衡方式
上記の賃金決定の方法や教育訓練・福利厚生等に関して、労使協定で定めた事項を遵守していない場合は、労使協定方式は適用されず、原則的な派遣先均等・均衡方式が適用されることになりますので注意が必要です。