「骨太の方針2021」による最低賃金額の引上げ〜コロナ禍での評価は?〜
2021年10月から都道府県の地域別最低賃金額が改定されました。
厚労省が公表した全国平均額は28円増、時給930円となり、昭和53年度以降で最大の引上げ幅となりました。青森、秋田、山形、鳥取、島根、佐賀、大分などは、中央最低賃金審議会が答申した目安である28円を上回る引上げとなっています。
2021年度の最低賃金額が注目されたのは、雇用維持優先だった政府の姿勢が一変したためです。
菅政権による「骨太の方針2021」
昨年度は厳しい経済・雇用状況に配慮し、中央最低賃金審議会は引上げ目安を示しませんでした。その結果、全国加重平均で最低賃金は1円の引き上げにとどまりました。
しかし、2021年度、菅政権は「骨太の方針2021」において、最低賃金引上げを地方活性化の重要施策と位置づけ、より早期に全国加重平均1,000円とすることを目指して引き上げに取り組むと明記しました。
日本商工会議所などの経済団体は「現行水準の維持」を求めていましたが、中央最低賃金審議会はワクチン接種が進んでいることや、経済指標の一部に回復がみられること、そしてなにより政権の意向を反映し、 全都道府県一律に昭和53年度の目安制度開始以降で最高額となる28円の引き上げ額を答申していました。
最低賃金額の改定に対する評価
2021年度の最低賃金額の改定に対する評価はさまざまです。
「コロナ禍で働く人の生活を支えるために賃上げは必要」「先進諸国の中でも日本の最低賃金は低水準であり、今後もさらなる引き上げを求めたい」とする意見がある一方、「本来、各種指標やデータに基づいて、公労使の真摯な議論によって納得感のある結論を導き出すべき」とする意見もありました。
現状、コロナ禍で企業業績はまだら模様です。とりわけ厳しい状況にある飲食・宿泊業などでは最低賃金の大幅な引上げによる打撃は大きいものと予想されます。それだけに、政府には、最低賃金の引き上げが地域の経済・雇用にマイナス影響とならないよう、中小企業等への賃上げ可能な環境整備に向けた一層の支援強化が要望されています。