【賞与・退職金をめぐる訴訟】非正規待遇格差による最高裁の判断は?
「同一労働同一賃金」を巡る複数の訴訟で、最高裁の判断が示されました。
退職金支給を求めたメトロコマース事件、賞与支給を求めた大阪医科薬科大学事件の上告審は、いずれも正規・非正規間の不合理な格差の是正を求めたものですが、最高裁は「不合理とまではいえない」として非正規側が敗訴。
また、同様に手当や休暇など5項目について格差是正を求めた日本郵便事件の上告審では、これらの待遇格差はいずれも違法であるとして、非正規側が全面勝訴しました。
各事件の最高裁の判断内容
それぞれの最高裁の判断をみると、メトロコマース事件では、職務内容や配置転換などの違いが厳密に認定され、退職金制度設計においては企業の裁量を尊重する余地が比較的大きいとされました。
賞与の不支給を争った大阪医科薬科大学事件では、アルバイト職員の職務は軽易で、配置転換もなく、正社員への登用制度も設けられていたことなどが考慮され、不合理ではないとされました。
最後の日本郵便事件では、正社員と多少の職務の違いが あっても、契約社員らには継続的な雇用が期待される実態があったとし、扶養手当、年末年始勤務手当、年始期間の祝日給、夏季・冬季休暇、有給の病気休暇についての格差は違法になるとされました。
賞与や退職金は金額が大きいだけに、非正規側の不公平感も大きく、またそれだけに非正規側の勝訴となれば企業経営への影響は大きかったものと考えられます。
待遇差がある場合は説明責任が必要
一方、是正を命じた手当や休暇などは、企業側にとって比較的負担の軽いものであり、企業側への影響と格差是正のバランスを図ったようにもみえます。
しかしながら、今回の判決において留意すべきは、性質や目的などの条件によっては退職金やボーナスの不支給が不合理と認められる場合はあり得ると言及していることです。
企業は待遇に違いがある場合、その合理性に関して十分に説明責任を果たせるよう準備しておくことが必要になると考えられます。