シニアの働き方が若手社員の転職意向に影響?〜就労意識に関する定量調査で明らかに〜
シニア社員の給料・評価に20代社員の3割が不満ー。
(株)パーソル総合研究所(千代田区:渋谷和久社長)が実施した「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」結果からこうした若手社員の意識が明らかになりました。
本調査は、企業への70歳までの就業機会確保の努力義務化を受けて、シニア社員の実態や若手社員への影響などについて分析しています。
定年後の再雇用による年収の変化
定年後の再雇用による年収の変化は、定年前とほとんど変化のない人(8.0%)と定年前より上がった人(2.2%)の合計は約1割で、その他の約9割の人は年収が下がったと回答しています。
「50%より下がった」が27.6%と最も多く、次いで「50%程度下がった」が22.5%となっており、再雇用者のうち約5割の人の年収が半分以下となり、全体の平均では44.3%低下しています。
定年後の再雇用による職務の変化
また、定年後再雇用者の職務の変化では、「ほぼ同様の職務」 (55.0%)が半数以上にのぼり、「全く異なる職務」と回答した人は1割にも満たない状況となっています。
ほとんどの定年後再雇用者は、定年前と同じ職務か、それに関連した職務に就いていることが分かります。なお、「ほぼ同様の職務」と回答した人の年収の変化をみると、平均39.3%下がっており、シニア社員のモチベーション低下の一つの要因となっていることが窺えます。
シニア社員に対する教育・研修
また、シニア社員に対する教育・研修の実施状況をみると、「実施されていない」(50.7%)が半数を占め、次いで「実施されているが充実していない」(29.8%)が約3割を占めています。
定年後再雇用者においては、その多くが定年前と同様あるいは関連した職務に就いているとしても、学び直しなど積極的に仕事に対する意欲を引き出し、しっかり会社に貢献してもらおうとする働き掛けが十分といえるか疑問が残るところです。
若手社員が感じる強い不公平感
一方、若手社員がそうしたシニア社員をどのようにみているかですが、本調査の結果をみると、若い年代の社員ほどシニア社員の処遇に対して強い不公平感を感じているようです。
シニア社員が得ている給料や評価に対して、20代の社員では約3割、30代でも3割弱、40代でも約2割の人が不公平感を抱いているという結果になっています。
シニア社員の働き方が若手社員に与える影響
また、本調査では、シニア社員の働き方が若手社員に与える影響として、転職意向との関連について分析しています。
シニア社員について、どのような業務を行っているのか分からない「仕事の不透明さ」のある職場では、それがない職場に比べて転職意向が25.5ポイント高くなっています。
また、シニア社員が「疎外された状況」にある職場では、それがない職場 に比べて転職意向が26.1ポイント高くなっています。こうした転職意向の傾向は、若い年代ほど強まっています。
このように見てくると、シニア社員の活用・戦力化といった課題を考える際には、若手社員への影響も考慮した全社的な人事施策が求められているといえそうです。