「働き方改革」通常の労働者とパート・有期労働者の待遇差についての説明義務とは?
事業主には、雇入れ時の雇用管理上の措置の内容、 待遇決定に際しての考慮事項などに関して説明義務があります。パート・有期雇用労働者の同一労働同一賃金の実現に向けて新設された、通常の労働者との待遇差の内容・理由についての説明義務についても確認していきましょう。
客観的、具体的な説明で理解と納得を促す
事業主に課せられた説明義務とは、パート・有期雇用労働者の不合理な待遇差の解消に向けた手続的規律です。パート・有期雇用労働者に求められた場合、事業主は通常の労働者との待遇差の内容・理由を説明しなければなりません。同一労働同一賃金ガイドラインでは、単に将来の役割期待に違いがあるといった主観的・抽象的な説明では足りないとされており、以下では説明に際してのポイントをまとめておきます。
「将来の役割期待に違いがある」では説明不十分
待遇差の内容理由の説明にあたっては、その比較対象となる通常の労働者を選定する必要があります。選定基準は、当該パート・有期雇用労働者の職務内容、職務の内容・配置の変更の範囲等に最も近いことです。
選定の基準には優先度がある
具体的な選定順序は、当該パート・有期雇用労働者と、
① 「職務内容」と「職務の内容・配置の変更の範囲」が同一である
② 「職務内容」 のみが同一である
③ 「職務内容」のうち「業務の内容」「責任の程度」のいずれかが同一である
④「職務の内容・配置の変更の範囲」が同一である
⑤「職務内容職務の内容・配置の変更の範囲」のいずれも同一ではないが「職務の内容が」 最も近い
の優先順に判断することが基本になります 。
なお、選定理由についても説明する必要があるほか、個人情報保護の観点から比較対象者が特定されないよう配慮しなければなりません。
待遇差の内容とはどのようなことを言う?
「待遇差の内容」としては、待遇に関する基準の相違の有無、そして、待遇の個別具体的な内容または待遇の決定基準を説明する必要があります。
通常の労働者の水準と比較して説明する
待遇の個別具体的な内容としては、例えば、基本給の平均額、モデル基本給額、標準的な手当の内容等のことです。
決定基準としては、例えば、比較対象の通常の労働者の待遇水準と併せて賃金テーブル等で支給基準を説明するといったことになります。
待遇差の理由の説明
待遇差の決定基準が同じ場合
「待遇差の理由」としては、待遇の決定基準が同じ場合には、成果、能力、経験などの違いを説明します。
待遇差の決定基準が異なる場合
待遇の決定基準が異なる場合には、待遇の性質・目的を踏まえた決定基準に違いを設けている理由として、職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲の違い、労使交渉の経緯などについて説明します。
それぞれ決定基準で通常の労働者、パート・有期雇用労働者にどのように適用しているかを説明することになります。
労働者への説明の方法
最後に説明の方法ですが、 事業主は、パート・有期雇用労働者がその内容を理解することができるよう、資料 (就業規則や賃金表など) を活用し、口頭により説明することが基本となります。
労働者が理解できる説明であることが重要
ただし、説明すべき事項をすべて記載した、 パート・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合には、その資料を交付するなどの方法でも差し支えないとされています。