過労死認定基準、20年ぶり改定へ 残業時間以外の業務負荷も考慮
脳・心臓疾患による過労死の労災認定基準が見直されます。平成12年の最高裁判決を契機に、長期間(発症前概ね6ヵ月) の業務負荷が評価に加えられて以来、改定は約20年ぶりとなります。
過労死ラインとは
認定基準の改定で注目されるのが、過労があったかどうかの重要な判断材料となる「過労死ライン」です。
現行では、残業が「直近1カ月で100時間超」か「2~6カ月間平均で月80時間超」の場合、脳・心臓疾患の発症と業務との関連性が高いとされ、労災認定が妥当とされています。
過労死ラインの見直し
この過労死ラインについては、過労死遺族などが月65時間超の残業をラインとするよう求めており、また、今年5月には世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)が 55時間以上の長時間労働で、心疾患や脳卒中のリスクが高まる」といった研究結果などを発表しています。しかし、今回、厚労省の有識者検討会が示した改正案によれば、現行の過労死ラインは維持されそうです。
労働時間以外の業務負荷
ただし、過労死ラインに近い残業がある場合、「勤務時間の不規則性」も考慮されるようになります。
具体的には、拘束時間の長い勤務、休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務などによる負担が大きい場合、労災認定されるとしています。
月の残業80時間未満の認定は少ない
もっとも、現行の認定基準でも労働時間以外の業務負荷を総合的に判断するとしていますが、昨年度の過労死認定では、月の残業80時間未満は1割弱となっており、実際に労働時間以外の業務負荷をどのように考慮するかは課題になりそうです。
今年は「過労死防止大綱」の見直しの年
今年は、過労死を防ぐ国の施策をまとめた「過労死防止大綱」の2回目の見直しの年に当たります。 厚生労働省が示した最終案では「勤務間インターバル制度」の導入企業割合を令和7年までに15%以上にする目標を掲げています。
認定基準の見直しもそうですが、残業時間のみならず、 従業員の働き方について事業主として十分、配慮することが求められそうです。